#471 · 2026.02.23 · ドバイ(UAE)
【中東遠征記 Day 17】アブダビからドバイへ。電子マネーの罠と、オールド・ドバイ「デイラ」で見つけたノマドの特権。
2026年2月21日
アブダビでのミッションを完遂し、今日はいよいよ中東最大のビジネス・ハブであるドバイ(Dubai)へと移動する日です。
アブダビからドバイまでは、長距離バスを使えば約2時間半でアクセスできます。
スムーズに移動して午後からドバイでの活動を開始する予定でしたが、旅の現実はそう甘くありませんでした。
思わぬ「システムの罠」にハマり、手痛いタイムロスを食らうことになります。
「Nolカード」の罠と、デジタル社会の摩擦
ドバイの公共交通機関(メトロやバス)を利用するには、日本でいうSuicaのような「Nol(ノル)カード」というスマートカードが必須です。
バスに荷物を積み込み、いざ乗車リーダーにタッチしようとした瞬間、「ビーッ」という無情なエラー音が鳴りました。残高不足です。
ここまではよくあること。普段通り、スマホからオンラインチャージをしようとしたのですが……なぜかシステムに弾かれ、決済が通りません。
仕方なく窓口のスタッフに「チャージしてほしい」と頼むと、返ってきたのは「ここは現金(Cash)しか受け付けない」という言葉。
私はキャッシュレス化が進む中東において、現金をほとんど持ち歩いていませんでした。
残された手段は、ターミナルにある自動券売機(チケットマシン)のみ。
しかしそこには、絶望的な光景が広がっていました。
券売機の操作に慣れていない大量の外国人観光客(主に中国からの団体客)が列をなし、一人ひとりのチャージに途方もない時間がかかって大渋滞を起こしていたのです。
結局、この残高不足とシステムエラーの連鎖により、私は約1時間もの時間をバスターミナルでロスすることになりました。
さらに、ようやく乗れたバスも途中で車の追突事故による渋滞に巻き込まれ、ドバイ到着は想定よりも大幅に遅れてしまいました。
「スマートシティ」を標榜するドバイやアブダビであっても、システムとアナログの境界線には、こうした強烈な「摩擦」が潜んでいます。
どんなにテクノロジーが進化しても、最後の最後でモノを言うのは「現金」や「物理的なオペレーション」だったりする。この些細なトラブルも、現地でビジネスのインフラを構築する上での教訓として刻み込みました。


オールド・ドバイ「デイラ」という異世界
なんとかドバイに到着し、今回の拠点となるホテルへ向かいました。
ドバイと聞いて多くの人が想像するのは、世界一高いビル「ブルジュ・ハリファ」がそびえ立つダウンタウンや、人工島に作られた超高級リゾートでしょう。
しかし、今回私が滞在先に選んだのは、「デイラ(Deira)」と呼ばれるエリアです。
ここは「オールド・ドバイ」とも呼ばれ、昔ながらのクリーク(入り江)沿いに広がる、古き良きアラブの風情を残す下町です。
ダウンタウンが「天文学的なオイルマネーで人工的に作られた近未来」だとするなら、デイラは「生々しい人間の生活と体温が渦巻く街」です。
街を歩けば、すれ違うのはインド、パキスタン、ネパール、フィリピンなどからの移民労働者たち。彼らこそが、あの煌びやかな高層ビル群を物理的に建設し、ドバイの経済を下支えしている本当の主役たちです。
物価もダウンタウンに比べて圧倒的に安く、スパイスの強烈な香りと活気に満ち溢れています。
「定住しない」ノマド起業家の特権
私はドバイに何度も来ていますが、来るたびに滞在するエリアを変えています。
今回、デイラという全く異なる顔を持つエリアに滞在してみて、「拠点を持たないことの強み」を改めて実感しました。
もし私がドバイの高級レジデンスに定住する駐在員や富裕層であれば、ダウンタウンの洗練された景色しか知らずに生きていくでしょう。
逆に、地方都市に住んでいれば、最先端のビジネスの潮流には触れられません。
特定の場所に根を張らず、スーツケース一つで様々な街や地区を転々と漂う。
だからこそ、社会の「上層」から「下層」まで、多層的なレイヤーを自分の足で歩き、市場のグラデーションを肌で感じることができる。
この「視座の移動力」こそが、ノマド的な働き方を選ぶ起業家の最大の特権であり、ビジネスの解像度を上げる最強の武器なのだと確信しました。

カレーと、縁が繋ぐドバイの夜
夕方、アブダビからの移動中に、ドバイで出会った日本人の駐在員の方から「もしよかったら今日の夜、ご飯でもどうですか?」と連絡をいただきました。
タイミングの良さに感謝しつつ、合流。
せっかくデイラ地区(インドやパキスタンからの移民が多いエリア)にいるということで、ディープなローカルレストランに潜入し、本場のマトンカレーをつつきました。
日本企業から派遣され、この過酷な中東市場の最前線で戦っている彼との会話は、非常に刺激的で面白いものでした。
サウジでの激闘を経て、ドバイに戻ってきてすぐにこうして顔を合わせ、現地の最新情報を交換できる。
移動のトラブルで疲弊した身体に、スパイスの効いたマトンカレーと、熱量の高いビジネスの会話が染み渡りました。
ドバイでの滞在期間は、今回は約4日間と非常に短いです。
しかし、この短い期間にどれだけアポを詰め込み、次への布石を打てるか。サウジで得た「点」を、このドバイの地でどう「線」へと繋げていくか。
息をつく暇はありません。
明日から、ドバイでの濃密な時間が始まります。
それでは、また。


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